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| 対策は簡単だった。爪の側面と本体の間に挟まっていたアルミ粉と思しき異物を取り除き、隙間にピカール(金属磨き)を染み込ませ、側圧をかけながら爪を何度も上下に動かして擦り合わせをし、念入りに洗浄の後、二硫化モリブデングリスを塗り込み、さらにエンジンオイルに浸しただけである。爪の先端と、爪が噛み合うロッドの溝をきれいに掃除したのは言うまでもない。 修復の完了したカムチェーンテンショナーを取り付けてエンジンを始動すると、昨日の異音がウソのように静かに回りはじめた。 ところが! 再び左のマフラーから煙がもくもく出てきたのだ。またしても目の前が真っ暗になりかかったところで“これはひょっとするとマフラー内に残っていたオイルが気化しているせいで、しばらく経てばおさまるに違いない”と、うまい逃げ口上がひらめいた。28日にエンジンをかけたときには、水抜き穴から霧状に吹きだしていたほどだから、迷路状のマフラー内には、まだ大量にオイルが残っているはずだ。そう考えた私は、とりあえず近所をひと回り走ってみることにした。 家から出てしばらくは、まるでオイルポンプの調整に失敗し、吐出量過多になった2ストのような感じだ った。バックミラーに、はっきりと青白い煙幕が写っていた。が、5kmほど走ると、トップギア2〜3000rpmの定速走行だと煙幕は見えなくなった。家に引き返し、スパークプラグをチェックすると、4本とも同じように乾いたカーボンパウダーが付着 |
| していた。28日に見たときとは明らかに違う。かなり安心した。 その後、点火時期の再調整とキャブの同調調整をし、もう一度乗ってみた。もう、始動時にも走行時にも煙はまったく見えない。それどころか、掃除のつもりでした全バルブの擦り合わせが効いたのか、あるいは事の発端となったバルブクリアランスの調整の効果か、以前にも増してスムーズなエンジンになっており、26日の(曲がったバルブのままで走 った)走行で感じた中開度の濃さを修正すべく施したジェットニードルクリップ段数の変更(5→3)も当りだったようで、過去最高に気持ちの良いエンジンになっている。 しかし、手放しで安心しきっているわけではない。バルブのわずかな曲がりだけで、これほど大量のオイルが流出するのか…という疑問がある。曲がったバルブで運転したために、バルブガイドに無理な力がかかり、バルブガイドの外周に隙間ができたり、その周辺のシリンダーヘッドボディーにクラックが入ったりしている可能性がゼロとはいえない。 …というわけで、今日のテスト走行の後は、シリンダーヘッドに充分オイルが回るまで(1分間程度)エンジンをかけ、直後に1番気筒を圧縮上死点(吸排気バルブがともに閉じた状態)にし、車体が大きく傾くようにセンタースタンドではなくサイドスタンドをかけ、1番気筒のエキゾーストパイプを外した状態で、24時間程度放置することにした。これで問題がなければ、完治したと判断して良さそうだ。 | |