XJ900の爽快チューン
My Motorcycle Diaries

2007年9月〜2008年1月に行ったエンジンフルオーバーホール(2007年4月末の事故による破損の修復と、同年6月に発生したスタータークラッチの修理を兼ねる)を終えたXJ900の、その後。
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2013年5月17〜19日 - ダンロップ・ツーリングステーション@愛媛・道の駅“風和里”
     
          
     
     
     
          

2013年5月14日 - 娘Bの通学の足にBJ(ベーシックジョグ)の不動車を購入
     
     
     
     
          

2013年5月7日 - 入手以来6回目の車検。今回もまた京都南検査場で
     
     
          

2013年5月6日 - 2013年度 第1回 月祝ツーリング。浜島(志摩市)にて海鮮を食す
     
     
     
          

2013年5月3日 - リプロパーツを使い、XS650E用ミクニBS38キャブを再生
     
     
     
     
          

2013年5月2日 - 3MA(TZR250後方排気)がウチにやってきた
     
     

2013年4月19〜21日 - ダンロップ・ツーリングステーション@箱根十国峠
     
     
     
     
          
     
     
     

2013年4月15日 - 10180kmぶりのオイル交換。A.S.H. FSE MOTO-SPEC 10W-50
     
     
     
     
     
     
     

2013年4月13〜14日 - ダンロップ・ツーリングステーション@パールロード鳥羽展望台
     
     
     
     
     
     
     
               
          

2013年4月12日 - ツーリングステーションに備え、前後タイヤをK300GPに交換
     
               

2013年4月5日 - 本格復帰めざしてバッテリーを交換。ついでにバルブクリアランスを点検
     
     
          
          
               

2012年12月16日 - こまき's Day。XS650Eのスロットル操作力低減とポイント調整、他
     
     
          
          

2012年12月3日 - 東名〜伊豆で佐藤編集長に試乗してもらい、沼津から高速で帰宅
     
 11月30日に書いたように、筑波の帰り道に都内で1泊し、今日はバイカーズステーションの佐藤編集長といっしょに箱根〜伊豆を走り、そのまま京都まで帰る予定である。
 8月末のダンロップ・ツーリングステーション@猪苗代からの帰路、編集部に立ち寄ったついでに簡単に試乗してもらってはいたが、あれはどちらかというと、スタジオ撮影
“オマケ”みたいなものであり、夜間、編集部から川崎市のオザワR&
Dまでの市街地を走っただけだったから、このマシンの良さを充分に味わってもらったとは言い難い。
 しかも、あのときは、バイカーズステーション2012年11月号の“試乗後記”に書かれたように“回して面白いのは7000rpmまでで、 そこから上限の9500rpmに至る間は、 意外にも回転の上昇に表情が乏しく、単に出力が増していくだけ”といった状態で、 5000rpmから上の回転域での力感と快感は雲泥の差…というか、

そもそもあのときは“快感”などなかったのだから、メインジェットを
#135→115にしただけで、ここまでエンジンが激変するということを、しっかり確認してもらいたい。
 操安性のほうは、スポーツデーモンを履いた状態を知らない編集長には、あのときも決して悪くなかったようだが“ツーリングでの気合いを入れすぎない走り”における爽快感には歴然たる差があることを知ってもらい、 私好みに仕上げたXJ900の操安性を充分味わってほしい。
 そんなことを考えながら、明け方まで降っていた雨が上がったばかりのハーフウェットの道を編集部に向かう。 今日もまたCBR1000RRか、あるいはCB830Fと2台で走るのか…と思っていたら、何と、平野カメラマンがハイエースを運転してついてきてくれるとわかった。寄り道ついでの遊びが、ちゃんとした雑誌の企画に昇格したということで、嬉しいやら申しわけないやら複雑な心境だ。

 ハイエースが同行とわかって、小田原あたりまでは 私がXJ900を運転するか、またはバイクも人間もすべてハイエースに積んで行くのか…と思ったら、さにあらず。とても乗り気の編集長は、嬉しそうに冬用ツーリングウェアの用意をし、そのインナーの背中に私が“貼るカイロ”を貼って準備完了。編集部から市街地を走り、途中で給油のあと東名に乗り、とりあえず海老名まで編集長がXJ900を走らせることになった。
 編集部近くのガソリンスタンドで満タンにし、一昨日の海老名からここまでの燃費23.8km/Lを確認したあと、 環七〜玉川通り(国道246号)
〜環八を経て東名用賀へ。前を走る編集長は、とくにハイエースを待つわけではなく、すいすいと進路変更をしたり、たまにはすり抜けをしつつ、ごく普通に走っていく。
 用賀で東名に上がった後の編集長は、ハイエースと離れないよう、明らかに速度を抑えて走行している。
環七から玉川通りに向かう途中、ハイエースの助手席から見た編集長とXJ900。この姿にもベテランの風格が感じられる。撮影ポイント近くにマシンを停め、ライダー交代。平野カメラマンの合図で立体交差下のカーブを往復して撮影してもらった。
そして、料金所をくぐったところで2台とも停車し、軽く打ち合わせ。その結果、海老名までは編集長が先に(好きなように)走り、その後、私と運転を交代することになった。
 東名での編集長の走りは、残念ながら、ほとんど見ることはできなか
った。まわりのクルマの流れよりもはるかに速いハイエースの助手席から見えていても、ぐんぐん離れていくから、何度かメーターの針を振り切る程度は出ていたはずだ。…かと思えば、数台前に姿が見えたりもする。ときおり雨がパラつく不安定な天候にもかかわらず、高速〜低速、加速〜減速〜定常…と、いろんな走行パターンを試していたのだろう。
 海老名から厚木を経て小田原までは、 私がXJ900に乗り、ハイエースを追走する。このエンジンの最も美味しい 5000rpm前後での走行だから淡々とした走りでも退屈な思いはしない。しかし、料金所で止まったり前車のペースが落ちたりして、3000

〜4000rpmから 緩い加速をする場面で、尻に伝わる振動の波形がいつもより尖っているような気がした。
 思い当たるフシは、進角調整ダイアルしかない。そこで、小田原の料金所で止まった隙に、4(基準マップより進角度数8度増)から5(同じく10度減)に切り替えてみた。これによって、とりあえず3000〜4000
rpmでの振動波形は いつもどおり滑らかになり、そのままオダアツの残り区間を走り、小田原西で降りてガストの駐車場にマシンを停めた。
 昼食後は、 再び編集長がXJ900に乗り、私はハイエースの横に乗って伊豆スカイラインを目指す。編集長はターンパイク、われわれは箱根新道で伊豆スカイラインを目指す。天候が不安定で、ときおり雨がパラついたりしているから、おそらくターンパイクはハーフウェット〜ドライの微妙な路面状況のはずで、すっ飛ばすのではなく“ほどほどのペースで快走”したときの、このマシンの

良さを味わってもらえるはずだ。
 ターンパイクの出口で待っていた編集長と合流し、熱海峠から伊豆スカイラインへ…。この区間は、風は強いが薄日がさしており、路面もほぼドライ。混んではいない…というより、ほとんど走っていないと言ってもいい交通量ながら、飛ばせばすぐに前車に追いつくので、ここは軽く流して伊豆スカの中ほどへ。
 ここから先は、われわれは併走せず、道端の空き地にハイエースを停めて、先行した編集長が戻ってくるのを待つ。しばらくして戻ってきた編集長によると、このすぐ先から奥まで、ずっと路面が濡れているらしいので、このあたりで撮影することに決め、まずは編集長の走りを見物させてもらった。見えるのは、目の前にある、撮影ポイントとなったひとつのコーナーだけだが、往復とも撮影するので、登りの右コーナーと下りの左コーナーの両方である。
 ここでの編集長は、いつもの試乗
撮影に向けて発進する編集長。最近のシェイプアップのおかげで、体重が減り、フロントフォークの沈み具合も少なくなった。
伊豆スカの奥のほうは雨+ウェットだったらしいが、ここは、風は強いが、晴れ+ドライ。ときおり雲の合間に富士山が見えた。
企画のときと同じく、道路状況とマシンコンディションが許す範囲内で目一杯の走りだ。途中で進角調整ダイアルを5→4→5と切り替え、あとで感想を聞くことにした。
 編集長が数往復した後、私も同じ区間を数往復して写真を撮ってもらい、試乗と撮影は無事に終了。まだ走り足りなそうだった編集長にマシンを返し、4月のダンロップ・ツーリングステーションの会場だった十国峠レストハウスまで引き返し、試乗後のミーティングをした。
 進角調整ダイアルの切り替えについては、5でも充分パワフルで、4だとトップエンドの力がありすぎて車体が負けている感じがするのに加え、 回転の上昇が速くて(9500rpm
〜とレッドゾーンが低いのも一因)運転操作が忙しくなり、走りを楽しむことができない…とのこと。
 言われてみれば確かにそうだ。4が最高…と思ったのは新東名の上でのことで、山道でテストしたわけで

はない。来るときのオダアツで感じた 3000〜4000rpmの尖った感じの振動とも合わせ、どうやら4は、寒い時期の高速道路上で、非現実的なハイスピード走行をするとき以外、5よりも良いところはないようだ。
 おしゃべりに熱中していると、あたりが暗くなってきたので、レストハウスから出、ハイエースに預けていた荷物を出してXJ900に積み、 帰路につく。このときの取材メモには
“16:45 十国峠 53586”とある。53586というのは、 2007〜2008年のエンジンオーバーホールが完成したときに0に戻してからの距離で、それ以前の66445を足せば 120031であり、編集長が走っている間に12万kmを突破していたことがわかった。
 編集長&平野カメラマンとは箱根峠で別れ、あとは沼津まで1で山を下りる。4月、8月に続き、今年3回目の道である。だが今日は前2回とは異なり、沼津から東名に乗る。西日本は深夜から雨の予報で、でき

るだけ早く帰りたかったので、途中で給油しなくていいよう、沼津IC直前のスタンドで満タンに。さすがに今日ここまでの燃費は20.5km/Lと落ち込むが、走りを考えれば望外というべきか。とにかくこれで、あとはただひたすら西に向かうのみ。
 そして結局、途中は新東名の掛川PAでおしっこ休憩をしただけで、そこから先は名阪国道の大内ICまで、亀山出口で通行料金を払った以外、ノンストップで走破した。貼るカイロのおかげで、寒さが辛さにまで至らなかったのと、何より、高速巡航時のこのバイクの気持ちよさのせいで“止まるのがもったいない”とい
った気分になったからである(笑)。
 大内から先は、30分少々の下道を経て、22時すぎに帰宅した。乗り出しから12万kmを超えた今が、エンジン/車体とも過去最良で、走りの楽しさも過去最高。“気持ちよさ”に加えて“タフさ”もまた爽快チューンのテーマになってきた。

2012年12月2日 - “飛び出すロードライダー!@筑波”にて青空整備教室を開催
     
 ROAD RIDER FESTA“飛び出すロードライダー!”というのは、ロードライダー誌が主催する読者参加型のイベントである。10時の開会から16時の閉会まで、盛りだくさんのイベントがぎっしり組み込まれているほか、インポーターやパーツ屋さんの出店もあり、 FESTAの名にふさわしいオートバイ乗りの祭典となった。
 私の出番は11時半から約30分間の
“青空整備教室”と、その後制限時間なしで続く質疑応答である。9時半からのスタッフミーティングに間に合うように、8時半ごろにホテルを出発した。結城市から筑波サーキ

ットまで、30分もあれば着くだろう
…と、タカをくくっていたら、途中で原因不明のエンジンストール。いや〜、アセりましたね(笑)。ガス欠みたいな予兆のある止まりかたではなく、突然死に近いので“あ〜、電気が逝ってしもたんか〜、しゃあないなあ…、ここにバイクを置いて、タクシー呼んでサーキットに行くしかないな…”と、暗澹たる気分に。
 が、あきらめるにはちょっと早いので、右のサイドカバーを外し、点火系に給電しているSSRのLEDを覗いたところ、いつもと同じように点灯しており、異常はなさそうである。

 …ということは、もっと深刻なトラブルなのではないか…と、よけいに心配になり、とりあえずその場でガソリンタンクまで外して点検しようと、まずはシート、続いて左サイドカバーを外したところで、あまりの間抜けさに笑いだしてしまった。
 原因は、サイドスタンドの下にかませるために持ってきた木切れがエアファンネルをピタリとふさぎ、ほとんど空気を吸い込めない状態にな
っていたからだと判明した(笑)。
 もちろん、木切れを取り除くだけでエンジンは復活。あとは無事に走り、筑波サーキットに到着した。
全体から見れば少数派かもしれないが、バイクいじりを楽しむ熱心な数十人のお客さんを前に“青空整備教室”を開講。
ロードライダー誌に連載中の“整備のドツボ”のロゴに似せた、今回の“青空教室”のロゴマーク。2013年3月号にも登場。
青空教室が終わったあとでXJ900を観察する、ライターの石橋知也(右)と中村友彦。中村さんには試乗もしてもらった。
 サーキットに着くと、もうすでに多数のお客さんが駐車場に集まり、開場を待っている。パドック内のシ
ョップのテントも準備を終え、デモカーや商品が表に並んでいる。
 9時半からの簡単な打ち合わせを終えたあと、自分の出番までは特に用がないので、パドックをうろつき回る(笑)。その中で滞在時間が長か
ったのは、お兄さんのほうが、かつて XJ900のテストライダーだったという鈴木兄弟の“ブルーライトニング”のブース。ここでは主力商品である i-con(インジェクションコントローラー)の取りつけ作業を見せ

てもらったり、自分のマシンに i-conを取りつけてもらいに来たお客さんとバイク談議に興じたりした。
 コース1000のストレートではドラ
ッグのタイム計測、インフィールドでは撮影会などが行われ、それらが一段落した11時半に、いよいよ青空教室の開演である。おおよその内容と進行は打ち合わせていたが、細かなことは何も決まっておらず、ほとんど即興である。最初に“レバーとペダルのポジションを合わせましょう”的な位置調整の話をしたあと、チェーン調整、そして最後にロードライダーの連載記事に書いたばかり

のキャリパーの位置決め(パッドとディスクの位置調整)の話をした。
 青空教室のような催しは、一方通行(原稿を書くだけ)になりがちな私の仕事にとって、読者の方々からのフィードバックを得る貴重なチャンスである。単にチェーン調整とい
っても、どこに興味を持ち、どこを詳しく知りたいのか、どこがわかりにくいのかなどがわかれば、次にチ
ェーン調整についての記事を書くときの参考にすることができる。
 やはり…と言うべきか、チェーン調整に関しては、具体的な調整作業よりも、前後輪の整列の出し方と点
前後ホイールの整列と後輪の向きを調整するとき“どこに立って、どう見るか”を、お客さんにやってもらいながら解説した。
ショップのブースに展示されていたカワサキZレーサーのスペシャルフレーム。スイングアームの造りと仕上げに、しばし見とれる。
ブルーライトニングの主力製品のひとつ、i-con。取りつけは、STDのコネクターを外し、間にi-conを割り込ませるだけ。
検のしかたが“よくわからない”の筆頭だった。前後輪の“耳”の部分がどのように見えれば良いか…ということよりも、そもそも、どこからどうやって目視するのか、要するに立ち位置や姿勢についてである。これがわからなければ点検のしようがない。今後の記事には、そのあたりも含めて書いていこうと思う。
 30分の“青空教室”が終わったあとは、個別具体的な質疑応答。これは覚悟していたとおり(笑)、 XJ900の改造に関する突っ込んだ質問や、ヤマハ純正部品の互換性に関する質問、ツーリングステーションと同じ

く足まわりのセッティングに関する質問などがメインで、ひとつひとつ答えているうちに14時になった。
 そこから閉会までの2時間は、ロ
ードライダー誌のライター中村友彦さんに試乗してもらったり、コース上のスタント演技を見物したり、カスタムマシンコンテストの結果発表を見るなど、一般のお客さんに混じ
って、このイベントを楽しんだ。
 帰りは、谷和原ICから常磐道に乗り、あとは首都高目黒線の戸越まで上を走るだけ。現役メカ時代に通い慣れた道なので、まさか間違うことはないだろう…と、油断していたら

サーキットを出てすぐに道に迷ったらしく、どこをどう走ったか、まったく記憶にないまま、最後は、途中で道を訪ねた軽トラのオッサンに谷和原ICまで先導してもらって、無事に常磐道に乗ることができた。
 渋滞の常磐道〜首都高をすり抜けに次ぐすり抜けで駆け抜け、小菅から北に回って初体験の中央環状線を通り、大橋ジャンクションをぐるぐるぐるぐる…と目が回るほど旋回して渋谷線〜環状線〜目黒線と乗り継ぎ、戸越で降りてチサンホテル品川ウエストに到着。直後に雨が降りだしたが、何とか濡れずに済んだ。

2012年12月1日 - 点火時期を微調整しつつ、振動の出方を探りながら筑波に向かう
     
 今回の筑波行きは、得意の“全行程下道”ではなく、高速を利用しよう…と、最初から考えていた。理由は2つ。ひとつは、このマシンで高速道路を走るのが思っていた以上に楽しいとわかったから。もうひとつは、全行程下道で行った場合、暗いうちに出発するか、暗くなって到着するか、いずれにしても、このクソ寒い時期にナイトランをしなければならず、それを避けるためである。
 そこで、高速利用で予定を立ててみて、ウチから結城市のホテルまで行くのに、9時出発〜17時到着というのが最も良さそうな気がした。
 遅めの出発のおかげで、着替えや持ち物の準備は朝に回し、給油と掃除のみ、昨夜のうちに済ませた。
 着るものは、 2009年1月29日の取材行のときを参考に、上下とも発熱効果のある下着を着た上に、冬場の釣り用と思しきキルティングのツナギを重ね、上は緻密な綿のBDシャツ
+ハイネックのスウェット+ハイネ
ックのダウンジャケット、下はスリムのジーンズ+オーバーパンツ。
 これまで何度か試した経験から、
“貼るカイロ”の効用と、効果的な貼りつけ位置がわかってきたので、それに従い、キルティングのツナギの背中側の最上部に貼りつけた。この、よくあるフツーの貼るカイロを買ったとき、ついでに、半月形の靴下用も買っていて、道中で爪先が寒くてたまらなくなったときに使うつもりでタンクバッグに入れた。

 そして、大きさが手ごろな靴下用を1個、袋を破って効く状態にし、シート後部に載せるカバンの中に放り込んだ。カバンの中に入っているノートPCを室内に持ち込んだときの結露防止が目的だ。長時間外気にさらされた物を室内に持ち込むときはPCに限らず、結露には要注意だ。
 これにて準備完了。明け方の雨のせいで濡れていた路面も徐々に乾きはじめ、ウチの前の道を見る限り、クルマが走っても水しぶきが上がらない程度になったので、10時すぎに出発。 最初は国道163号で三重県に入り、伊賀市の大内インターから名阪国道に乗る、通い慣れた道だ。
 ここ数年で最も美しい状態にまで磨き上げたマシンが、ここまでの道でどれくらい汚れたかが気になり、大内で各部を点検。大したことがなく安心したのも束の間、名阪国道に乗ってすぐに、距離は短かったものの、わだちに水が溜まるほどの雨に見舞われた。が、雨雲レーダーに大きな塊は映っていなかったはずなので、かまわず走り続け、亀山へ。
 今日はここで1には降りず、そのまま走って東名阪道に入る。入ってすぐの亀山PAで再び汚れ具合のチェ
ック。今度も大して汚れてなかったので、ここまでのところ、タンクバ
ッグに入れてきた掃除道具には出番なし。今回は2泊3日の短い旅なので、着替えが少ない分、途中で掃除するための布、ブラシ、研磨剤入りワックスなどを持ってきたのだ。

 まだ1時間しか走ってないのに、売店にあった十勝餡ドーナッツと甘栗デニッシュが食べたくなり、それを買って少し早い昼メシにした。食べている間に空は晴れわたり、秋のような陽光がさしてきた。
 12時ごろに亀山を出発。東名阪道は珍しく空いており、少々風が強いのを除けば、気温もさほど低くはなく、天気も快晴に近い好条件の中を快走し、間もなく伊勢湾岸道へ。ここから東海市あたりまでは、伊勢湾に突き出た埋立地をつなぎ、それらの間の水路の上をいくつもの大きく高い吊り橋で跨いでいく。いつ通っても風が強く、緊張する区間だ。
 このマシンの横風に対する安定性は、過去3回にわたって大幅に向上している。1回目はリアショックをオーリンズに替えたとき、2回目はステアリングヘッドの作動性を高める改造を施したとき、3回目はバッテリーの移設をはじめとする重量配分の適正化をしたときである。
 これらのおかげで、横風の強さや方向が急変したときのマシンの進路や姿勢の乱れが小さくなり、ドキッとかヒヤッとすることはほとんどなくなった反面、巡航速度が高いときには、風を受けた乗り手の上体が帆船の帆のようになり、マシンに余分な動きを伝える場面があるようだ。
 カウリングを装着する、上体の姿勢を変える、速度を落とす、腰から上を軟体動物のようにするなど、いくつかの改善策の中で、最も現実的
新東名の新静岡ICをすぎたあたりから富士山が見えはじめ、清水あたりでは真正面に、陽光を受けた美しい姿が見えた。
なのは上体の姿勢だろうか。横風対策を抜きにして考えても、高速走行時には、もう少し上体が前傾したほうが良さそうだ。今のままで上体を支えようとすると、両腕でハンドルを引っ張るしかなく、速度が高まるにつれて、その力がどんどん増していくから、最後は懸垂をしているような辛さを味わうことになる。
 が、まあ、これは、私にとって非日常的な高速道路上での話なのに加え、かつてこのマシンでは(瞬間的に出したことがあるだけで)巡航したことのない速度域における現象でもある。仮に、上に書いた改善策を施したとすれば、日常域での心地よさが阻害される可能性が高いから、こんな走りをしないか、または懸垂状態を我慢すれば済むことだ…と、わかっちゃいるが(笑)、トップエンドまでスイートに気持ちよく回るエンジンの実力を、たまには味わいたい気持ちを抑えるのも辛い(笑)。
 そんなことを考えながら走っていると、あっという間に豊田ジャンクションから東名へ。新名神の接続により大幅に改良された東名阪道や伊勢湾岸道を走ったあとで東名に入っての第一印象は“古さ”である。道幅が狭く、カーブがキツく、舗装が荒れていて、おまけに防音壁や植え込みのせいで見通しが悪い(開放感がない)のが原因か。ここの最高速度が80〜100km/hなんだから、 伊勢湾岸道などは、120〜150km/hまたは速度無制限でも良いと思う。

 その思いは、三ヶ日から新東名に入って、さらに深まった。新東名が新幹線だとすると、従来の東名は在来線と言えるほどの差がある。これほど立派な道路を 法定速度100km/hのままにしておくのは、それこそ放置もいいところで、 最低でも120〜
130km/hの 最高速度指定にしていただきたいものだ。片側3車線区間で用もないのに延々と中央車線を走るクルマの指導/取り締まりと合わせて、静岡県警にお願いしたい。
 新東名でのXJ900は、 間もなく車齢22歳、積算走行距離12万kmを迎えるマシンとは思えぬ走りを味わわせてくれた。速さについては、入手以来、今が最速。しかし、それにも増して“この気持ちよさはどうよ!”
てな感じである。1台のバイクに5万
km以上乗った記憶はなく、15万km程度乗ったクルマの場合は10万kmを超えたあたりから明らかに性能低下と各部の劣化が著しかったから、このXJ900のタフさには驚くばかり。
 速さと気持ちよさに酔いそうになりながら新東名を快走していると、不思議なことに気がついた。6000〜
8000rpmあたりで、 ゴロゴロした微振動が出たり出なかったりするのである。そもそもこんな回転域で巡航した経験がないから、最初は“ここまで回せばこんなもんだろう”と、あまり気にしていなかったが、走っているうちに、トンネルに入ると急に振動が低減し、トンネルを出ると再び微振動が出ることがわかった。

 長いトンネルの多い新東名のおかげで、何度試しても再現することがわかり、ひょっとするとトンネル内とそれ以外の気温差による燃調のズレが原因ではないかと考えた。トンネルによっても違うが、アテにならない体感では、外よりもトンネル内のほうが5度程度気温が高そうだから、トンネルに入るたびに燃調が濃い方にズレるのかもしれない。
 だとすれば、燃焼時間が変化し、ピストンの頭を叩くタイミングが変わり、振動の出方に差が生じても不思議ではない。そこで、ASウオタニSP-II フルパワーキットのイグナイターについている進角補正ダイアルをいじれば、ひょっとすると、トンネル以外の場所で 6000〜8000rpm時に出ている“ゴロゴロ感”がマシになるかもしれないと考え、牧ノ原PAに入って調整することにした。
 しかし、もともとイグナイター本体に貼ってあったラベルを剥がしてしまっていて、ダイアルの0〜9までの数字の、どれにすれば何度、基本マップよりも進角度数が増減するのか、わからない。魚谷さんは土曜休みで電話がつながらず、何人かの知人にも電話してみたが、結局わからずじまい。こうなりゃ、いろいろやってみるしかない…と、このところずっと5だった進角度数調整ダイアルを7にして走行を再開した。
 走り初めて間もなく、7にしたのは失敗だったと気がついた。シートから坐骨に伝わってくる振動の感じ
藤枝PA/清水PA/海老名SAで点火時期を微調整。ダイアルの数字と調整度数の関係は、ホテルに着いてから調べた。発熱効果のある下着の上に着たキルティングのツナギ。その背中側首もとに“貼るカイロ”を貼った。この効果は絶大である。
では、5と7の振幅には大差がないものの、7のほうが主振動に混ざるノイズが多く、 5000rpmのスイートスポット(まるでどこかにエンジンを落としてきたのではないかと思うほど低振動な領域)も、7だと消えてしまうことが判明したからだ。
 再調整のために清水PAに入り、今度は3を試す。これまた、とくに振動が強まるわけでも弱まるわけでもなく、振幅は5や7と同程度。ノイズの量は5より多く、7と同程度。ただ、ノイズの質は7とは異なり、7が“もやもや”だとすると、3は
“ざらざら”といった感じである。ただ、 7だと消えてしまう5000rpmのスイートスポットが3では消えずに残っており、感触の良い順に並べると5−3−7だと言える。
 そんなことをしながら走っていると、新東名が終わって東名に合流。ここからは交通量が増えてテストにならないので、軽く流していると、思ったより早く大井松田あたりでリザーブに…。上に書いたテストの結果にも燃費にも少々ガッカリしながら、給油のため海老名SAに入った。ここでの給油量は19.41Lだから、燃費は22.67km/L。 悪い数値ではないが、東京まで無給油で行けるかも…と思っていたから、期待外れだ。
 点火時期については、ここまで試した3種類の中では、元の7が最も良かったので、さらに別のを試すか7に戻すか少々迷ったあげく、4にセットして続きを走ることにした。

 海老名SAから出てすぐに、これぞ
“大当たり”のような気がした。自分のマシンでは今まで体験したことのない、恐ろしく強烈な高回転域の吹き上がり!  8000rpmを超えてもぐいぐいと、重いマシンを力づくで加速させていくのがわかる。
 だが、このセットの麻薬的快感を味わうには、海老名から東京までの区間は交通量が多すぎ、おまけに日も暮れてきたので、 あとは5000rpmあたりをキープして淡々と走り、東名東京ICで降りて環八〜笹目通り〜目白通りを経て大泉ICから外環道に入った。ここまでの感触では、下道での4と5の差はほとんどなく、しばらく4のままで走ることにした。
 川口ジャンクションで外環道から東北道に入ると、さっきまで降っていたような感じのウェット路面…。しかたなく巡航速度を落とし、クルマの流れに乗って最後の高速区間を走りきり、佐野藤岡ICで降りた。
 ここから先は、出発前に頭に叩き込んだ記憶を頼りに、国道50号で結城市を目指すはずのところ、走りだしてすぐに“道の駅みかも”というのを見つけ、久しぶりの休憩。入ってみると、数台のバイクが停まり、レストランにライダーと思しき兄ち
ゃんたちの姿が見えた。ちょうどええ、ワシもここで晩飯にしよ…と、広島産かきフライ定食を食べながら兄ちゃんたちに結城市までの道を詳しく教えてもらう。旧道に入らず、すべてバイパスを走って、茨城県に

入ればすぐに結城市だそうだ。
 目的地は近いし、大して寒くもないので、ここではコーヒーも飲んだりしながらゆっくりして、19時すぎにようやく走行再開。兄ちゃんに教えてもらったとおりに30分ほど走ると、結城駅に近いホテルに着いた。
 チェックインして、すぐにノートPCをネットにつなぎ、イグナイターのダイアル設定を検索する。最初にヒットしたのは、知らない人のブログ。それによると、0が標準。1から4までが標準よりも進角度数が増える側で、1が2度、2が4度、3が6度、4が8度。5から9までは標準よりも進角度数が減る側で、5が10度、6が8度、7が6度、8が4度、9が2度…と判明した。
 ダイアルの設定がわかったところで、新しい疑問が…。最良が4(進角度数8度増加)なのに、セカンドベストが5(10度減少)と、調整範囲の両極端が良くて、中間の3(6度増加)や7(8度減少)は大して良くない理由が見当たらないのである。ひょっとすると、5で走ったとき(自宅〜藤枝)と4で走ったとき(海老名〜結城)の気温の差、またはスロットル開度の微妙な差(前者のほうが、やや大きめ)によるものかもしれないが、確証はない。
 今後もテストを繰り返し、うまくいけば、そのときどきの気象条件に合わせてダイアルをいじり、点火時期を微調整する…といったことができるようになるかもしれない。

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