に春のスイッチが入ってしまった私は、密かに、バイクで磐田まで行こうと考えていた。 XJ900にとってはおそらく出荷以来初の“里帰り”である。前夜遅くまで天気予報や地図を眺め、鳥羽からフェリーで伊良湖に渡って行こうと決めた。 朝、5時に自然に目覚めた。春のスイッチと“磐田でTZの取材”という高揚感のおかげだろうか。もう一度天気予報で日中の予想最高気温を確認し、迷わずに出発した。 いくら平年より暖かい予想とはいえ、年間で最も寒い1月下旬だから発熱効果のある下着の上にキルティングのツナギを着、シャツの背中に14時間持続型のカイロを貼ってからカーディガンをはおり、さらにその上にダウンジャケットを着込んだ。 これは正解だった。走りだして間もなく、道端の温度表示は-1、-3…と下がりはじめ、京都府と三重県の境あたりで、バイクに乗車中に見た中で最低の“-4”にまで低下した。 ところが、走っている間も、下りて写真を撮っているときにも、まったく寒さは感じなかった。温度が低すぎて、シャッターを押す前にデジカメのバッテリーが2本とも落ちてしまい、しばらくクランクケースの上で温め、かろうじて1カット撮れたのが上の写真である。30年近く前 に同じようなことをしていた光景をちらっと思い出した。 | 三重県の上野で国道163号から422号に入り、 さらに165号で山を越えて23号へ。松坂でおしっこ休憩。時計を見ると8:58。ヤバい。乗る予定のフェリーは、38km先の鳥羽を9:30に出航だ。普通はここで諦めるのだが、 マシンが“GO!!!!!!!”を求めていた。わかった。やってみよう。 そこから先の我がXJ900は、 普段は隠しているパワフルな一面をたっぷりと見せつけてくれた。気温は摂氏10度以下で気圧は高い。いわば自然に過給が効いたみたいな状態だから、高回転でぐいぐい加速する。 5DL39という極端に先細りのジェットニードルの2段目テーパーが効きはじめるあたりからは、クランクケ ース内の強制減圧との相乗効果で、まるで2個目のエンジンに火が入ったような感じ。夏場にも不満はなか ったが、今になって思うと、かなり濃いめで走っていたのだろう。 鳥羽港には9:30に到着。だが、慌ててフェリー乗り場に入ったとき、船のゲートはすでに閉まっていた。まあいいか。 次の10:50発でも、磐田に15時だから余裕は充分だ。フェリーターミナルでサザエの壷焼きを食べたり土産物を眺めたりしていると、間もなく次の船が接岸した。 鳥羽〜伊良湖間の55分の船旅は、まさに“うららか”な、自力で高速道路を走っていたのでは決して味わえない、高ぶった気持ちを静めつつ |
| 取材については、来月15日発売の別冊MC誌をご覧いただくことにし、ここには詳しく書かないでおこう。 終わって帰ろうとしたら、ヘッドライトのロービームが点灯しないのに気がついた。ハイは問題ないが、警告(またの名を教育的指導)のために、ハイビームにした対向車がセンターラインを越えて来ないとも限らない。どこかで直さなければ…。 でも、まだ球切れだと判明したわけじゃないから、できればバイク屋さんで、診断を兼ねて、できれば自分の手で…と考えた。このあたりのショップで、携帯に電話番号が入っているのはタイラレーシングかガーフィールドしかない。時間が遅いから、平さんところは閉まっていそうだから、二橋くんところか…。 …というわけで、二橋くんに電話をして、浜松インターから近い彼のお店“ガーフィールド”に寄った。電話では年に何度か話しているが、会うのは20年ぶりくらい。モリワキ→ホンダ→スズキと渡り歩いたレースのメカニック。元の同業者だ。彼のところに電話をした瞬間から、もう、早く帰るのは諦めていた私は、修理なんかそっちのけで、たっぷりと昔話に花を咲かせた。 話しながら、一応ヘッドライトを開けて配線をチェックしたが、作業に身が入るわけがない。早々に断念して、テールカウル内に入れて持ち |