6月24日・木曜日。朝7時に朝食に向かう。
いつもの旅行中と同じで、短時間の睡眠でも目覚めは良い。
食堂はホテルの1F。
建物の外観と同じく、朝食のメニューもイギリス的だ。
カリカリに焼いた薄切りの食パンやゆでタマゴなど
他の大陸諸国の安宿ではあまりお目にかかれないものが並んでいる。
コーヒーは、見た目には濃すぎず薄すぎず、ドイツ的である。
が、ここでボクは珍しく紅茶にした。
オランダにはあの美味しい紅茶“ファンネル”があるのだ!
発酵度が高く、とろっとした味が特徴のファンネルは
ティーバッグでも十分楽しめる。
先に食事を済ませたボクは駐車場に行き
クルマをホテルの正面に回送した。
ホテルの真裏の駐車場から正面に回すだけで
一方通行の道路を
まるで迷路を解くようにぐるぐる回らなければならない。
途中の交差点で何度か
いきなり横切ったり曲がったりする自転車に接触しそうになりながら
ようやくホテルの正面に着くと
Wさんもiさんも、すでに荷物を歩道に運び終えて待っていた。
グローニンゲンからアッセンまでは約30km。
まだ予選1日目、それも早朝なので道は空いている。
われわれは、毎年ヨーロッパ内の全GPを撮影しているiさんの案内で
アッセンの1個手前の出口で降りて
一般道を走って行くことにした。
蛍光オレンジの仮設標識に従った普通のルートだと
アウトバーンを降りてから渋滞に巻き込まれる恐れがあるからだ。
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グローニンゲン〜アッセン間は
アウトバーン[A28]で約30km。
オランダらしく、起伏の少ない
牧草地の中の道だ。
並行して一般道も走っており
アウトバーンが混んでいるときは
一般道を使うこともある。
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決勝日には、アウトバーンの途中に観客専用の出口が作られ
そこから最短距離でサーキットに行けるのだが、予選日には使えない。
予想以上に観客が多かったり、駐車場がぬかるんで使えないときは
アウトバーンを1車線規制にし
路肩と走行車線を駐車場として解放することもある。
オートバイという乗物の社会的地位が低い日本では
考えられないことだ。
ダッチTT=オランダGPは
今年もまた気まぐれな天候に見舞われた。
年間降水量は少ないが
オランダの降雨日数はかなり多いような気がする。
サーキットの入り口からプレス専用の駐車場までの間だけで
5〜6ヶ所のセキュリティーチェックがある。
クルマの車両通行証と人間のクレデンシャルカードを示すと
オレンジ色のベストを着たオフィシャルが
ていねいに挨拶して通してくれる。
たいていは40〜50代のオヤジだが
中には10代の女性オフィシャルもいて目を楽しませてくれる。
10代ったって、オランダの10代はもう
少女じゃなくて女性と呼ぶのがふさわしい。
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オランダGPの冠スポンサーである
ラッキーストライクのマークと
『TT』の文字が入った看板
そして草地の中の泥んこ道と
今にも降り出しそうな空。
オランダGPの象徴的光景だ。
少女からおじいさんまでが
オフィシャルとして
1949年以来の伝統的イベント
『Dutch TT』を支えている。
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草地の駐車場にクルマを停め
重い荷物をもってプレスルームに向かう。
窓際で、電源に近く
コース上の映像やタイムを表示するモニターが見やすく
電話室やファックス
コピーなどのサービスに近い席を確保するのは大変だ。
初日にそこを確保し、机に名刺を貼れば
翌日からそこを専有できる。
毎年6月の終わりに開催されるオランダGPは
シーズン中盤の大事なレースで
オートバイ関係の出版社が多いイギリスから近く
ヨーロッパ各国からの交通の便もいいから
他の国のレースよりもプレス関係者の人数が多い。
観客も多く、最盛期には20万人が詰めかけたという。
その多くがドイツやイギリスからオートバイでやってきた連中だ。
最近になって、やや観客は減ったが
それでも10万人を下回ることはない。
四輪のレースが行われないコースのため
キャッチネットやガードレールがなく
コースサイドぎりぎりのところで観戦できるのも
アッセンのレースの人気が高い理由の一つである。
予選初日の取材が終わって、プレスルームで聞いてみると
日本人プレスのほとんどが
グローニンゲンに泊まっていることがわかった。
よって、晩メシはグローニンゲンに決まりだ。
行き先は、カメラマンの先生がたが多いので
ドイツGPのときと同じく中華か日本食かイタ飯しか考えられない。
「グローニンゲンには、日本食もイタ飯も、ウマいところはないんだ」
そう聞かされたボクは、悪い予感がした。
“ひょっとすると、木・金・土と、中華3連食なのか…”
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