12時半にニースを出発した。
ニースの西で海に近づいたオートルートは
すぐに山の中に戻っているから
街の東から乗ろうとすると
山に向かって街中を走らなければならない。
このあたりの、曲がりくねった坂道の両側に広がる旧市街は
地中海に面した町に共通の景色だ。
信号待ちをしていると、後ろに真紅のマシンがやってきた。
フェラーリだった。
ボクは、信号が青に変わると同時に全力でダッシュし
右側の車を抜いたところで進路をゆずった。
抜いていったのはイタリアナンバーのテスタロッサだった。
トンネルの中に快音を轟かせて
テスタロッサは見えなくなった。
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ニースからオートルートに乗って
東に向かうと
約25kmでイタリア国境。
本当の国境はトンネルの中だが
便宜上、トンネルを出た谷あいに
イミグレが設けられている。
オートルートはアウトストラーダに
フランはリラに
高速の標識は青から緑に変わる。
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ニースからイタリアは近い。
モンテカルロを下に見て、30kmほど走れば
そこはもう、イタリアとの国境の町・ヴェンチミリア(Ventimiglia)だ。
真っ暗な中に[ITALIA]という
標識が吊るされたトンネルを抜けると国境だ。
パスポートは、もう、ポケットから出そうともしなかった。
が、イタリアリラの手持ちが少なかったので
イミグレの脇の両替屋で両替した。
「ボンジョルノ シニョール。カンビオ ペルファボーレ」
ボクは、イタリア語のときが一番声が大きい。
“照れ”がないのだ。
もちろん、語学力はフランス語やスペイン語といい勝負
ということは、ほとんどできないのだが
相手の反応がこちらを照れさせないのだと思う。
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国境を越えたり
フェリーを降りたりすると
その国の法定速度を知らせる
道路標識がある。
これによると、イタリアでは
1100cc以上の乗用車の場合
一般道では90km/h
高速道路では130km/hが
制限速度の標識がない場合の
最高速度だということがわかる。
誰も守っちゃいないが
350cc以上のオートバイが
1100cc以上の乗用車と同じ
130km/h制限というのはうらやましい。
もちろん、欧州各国と同じく
2人乗りで通行できる。
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両替を終え、アウトストラーダに入る。
このあたりのオートルートやアウトストラーダは
ミシュランの地図帳では海沿いだが
実際は海から数km奥に入った山すそを
トンネルや橋でブチ抜いている。
木曽山脈が日本海に没して
親不知・子不知の難所ができたように
ここではアルプスが地中海に落ち込んで
急峻な地形を形づくっている。
橋の上からは、海沿いの街並みや谷に沿って
山に向かう道路などが見える。
そんな、細い谷に臨む急斜面に、温室がいっぱいある。
中央分離帯や路肩の花は
スペインや南フランスに多かったエニシダが減り
赤から白、白から赤への夾竹桃のグラデーションに変わる。
ちょっとばかり気候が湿潤になったからだろうか?
きょろきょろしながら運転していると
間もなく“San Remo”の標識が見えた。
名前につられてアウトストラーダを下りた。
出口の料金所で金を払い、領収書をもらうとき
相手のオヤジが何か言ったが
あまりの早口に、何を言っているのか聞き取れなかった。
海に向かう道は、狭く、急な坂道だった。
ヴェスパに乗ったノーヘルの兄ちゃんが
全開で坂を駈け上がってくる。
そう。ここはセッカチーノの国・イタリアなのだ。
運転には十分気をつけなければならない。
サン・レモの街までの道には
思わずクルマを停めたくなるような景色があふれている。
土地の起伏と道のカーブに沿って張り巡らされた
石積みの塀や壁。
その塀や壁のいたるところに
花を咲かせる真っ赤なバラや紫色のつる草。
相変わらずゼラニウムも多いが
ここではひ弱そうな草花ではなく、立派に枝を広げている。
アウトストラーダから見えた温室は
生花の栽培をするものだった。
通りすがりに覗いてみると
中ではいろんな園芸植物が花を咲かせていた。
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