09 フランスふうのホテルの朝食


6月16日。朝7時に目が覚めた。
窓から外を見ると、雲ひとつない晴天。
湖は、昨日の夕方とは逆方向の光を受けて表情を変えている。
今日はここからモンペリエに出て
地中海に沿ってバルセロナまで行く。
寄り道なしで580kmの行程だ。

ネット上の知人がポルトガルとスペインを旅行中で
今日からバルセロナに滞在する予定なので
南仏まで来たついでに会いに行こうと思ったからだ。

フランスの安ホテルの朝食は、はっきり言って物足りない。
アルカデとかイビス、ノヴォテルなどのチェーンでは
他の国と差があってはマズいので
一応、何でもアリのバイキングになっているが
そうじゃないホテルの朝食は
パンとコーヒーだけのところが多い。
ここも同じだ。

カゴに入ったフランスパンを持ってきたギャルソンが
「ティー or カフィー?」と
まるでSQの機内みたいな口調で聞き
陶器のポットに入ったコーヒーとミルクを持ってきた。
テーブルにあったカップは
きのうの“グランデ”と同じものだった。
バターの他、パンにつけるものはアプリコットジャムしかなかった。
ドイツと比べるとかなり見劣りするが、しかたない。
ミルクをたっぷり入れたコーヒーと
焼きたてのパンは、さすがに美味しかった。


建物の南東の角にあるカフェテラスは
宿泊客の朝食室でもある。
内部はお世辞にもきれいとは言いがたく
同じ建物内のレストランより
雰囲気もはるかに庶民的。
オートルートが開通する前は
幹線道路[A9]のサービスエリア的に
機能していたのだろう。


部屋に戻って荷物をまとめる。
これからしばらく、一人でクルマを占有できるから
毎日、部屋に運ぶ必要がなくて
もしも盗られても大丈夫なもの
例えば、5000リラの雨傘とか1000円のトレーナーとか
不要になったドイツGPのプレスリリースとか(捨てればいいのに…)を
クルマに積みっぱなしにすることにした。

それから…、積みっぱなしじゃないが
ダッシュボードのボックスに短いレンズとストロボとフィルムを入れ
助手席の上に広角レンズのついたカメラを
足元に300mmのレンズとカメラバッグを置き
運転中に発見した景色を、すぐに撮れるようにした。

荷物を積み終え、レセプションで精算すると
アクセスのためのリヨンやトゥールーズはいいとして
スペインに何度も国際電話をかけたのに
電話料金のトータルは37フランにしかなっていなかった。
しばらくホテルのまわりの景色を撮り
兄ちゃんと姉ちゃんに出来損ないのフランス語であいさつをして
まずは湖に沿って走りだした。