02 ドイツ的朝食とグランプリ取材

夕食がマクドナルドだったので腹が減った。
外は、さっきまでの雨がウソのように晴れわたっている。
6時半から始まる朝食の時間が待ちきれず
10分前に地下のレストランに行った。
用意されていた朝食は、期待通りのもの。
大きなカゴに盛られた湯気の出そうなパンの半分は
ボクの大好きな、ドイツならではの
渦巻き型のカイザーゼンメル(Keisersemmel)だ!

他の皿は、薄くスライスした各種のハムやソーセージ
そして、同じく、薄くスライスした各種のチーズ。
バターも、やはり日本のものより美味しい!
コーヒーは、ポットに入れて置いてあるから、好きなだけ飲める。
もちろん、味は、アメリカンより濃くフレンチより薄い。
朝食とコーヒーは、やはりドイツが最高だ!

ゆっくりと朝食を楽しんでいると
再び天気が怪しくなってきた。
出発予定の8時になると空は一面雲に覆われ
風は冷たく、今にも降りだしそうになった。
だがボクは、半袖・半ズボンのまま行くことにした。
暑さを我慢するより寒さを我慢するほうが快適に違いない。

ホテルからサーキットまでは、クルマで10分くらい。
ホッケンハイムの小さな商店街や住宅地の中を通過する。
庭にはバラやケシ
窓辺にはゼラニウムやマリーゴールドを飾っている家が多い。
にわか園芸家になった今年のボクは
ヨーロッパにゼラニウムが多い理由を
育てるのに手間がかからず
年じゅう花を咲かせる植物だからだということを知っている。

結局、一日中、ホッケンハイムの空には厚い雲が垂れ込め
半袖・半ズボンですごせる限界と思われる寒さだった。
サーキットには何人か半袖・半ズボンのヤツがいたが
顔を見合わせてはお互いに苦笑いしていた。

レースの公式プログラムは金曜日から始まる。
金曜と土曜は、午前中が各クラス1時間のフリー走行
午後が各クラス1時間の公式予選になっている。
オートバイのレースは排気量別に
いくつかのクラスに別れていることが多い。
世界選手権(GP)ロードレースは、125、250、500の3クラス。
ところどころで、世界選手権サイドカーレースが併催される。
ここホッケンハイムでもサイドカーが加わり
4クラスのレースとなった。

全部の予選が終わると、午後5時近くなる。
それから選手やチームのスタッフの話を聞いたり
日本の編集部と連絡を取ったりしていると
仕事が終わるのは7時か8時になる。
最後に、その日の走行データのコピーを
もらって帰るのが日課になっている。

各選手のマシンに積まれた発信機と
スタート&フィニッシュラインに置かれた
受信機によって計測されるタイムを元に
さまざまな処理を施して得たデータを
フロッピーにコピーしてもらうのだ。
計時・表示システムは
世界選手権ロードレース専門のチームが運営していて
大型トラック1杯ぶんのOA機器を連れて転戦している。
フロッピーでデータがもらえるようになって
最低でもレースごとに厚さ5cmはあったA4の書類の束が
半分以下になった。

計時・表示担当チームは、イタリアの会社だからか
オリベッティを使っている。
プレスルームで幅を効かせているのは
フランスで大流行のMAC。
それ以外の外人勢にはIBMや東芝ユーザーが多い。
1.44メガバイトのフロッピーが読めないと
データの交換が大変だから
自分のマシンをDOS/Vにしたのは正解だった。